ますます多文化になる、「日本の縮図」の役割を担う

10か国語に対応する行政書士事務所

行政書士法人 中井イミグレーションサービス

代表行政書士 中井 正人 様

はじめて外国人を採用されたのはいつ頃ですか?

1992年の設立当初からです。

早稲田大学の近くで始めたのですが、留学生をアルバイトとして採用しており、むしろ日本人社員はゼロでした。入管手続という外国人に対するリーガルサービスを提供していますので、外国人も電話受け付け、対応をしています。

当時、多言語対応ができる事務所は少なかったです。

 

現在では18名の行政書士とスタッフのうち、半数以上が外国生まれ、もしくは外国人の家族を持つ社員です。

多国籍な環境ですね!

正社員としてはオーストリアのスタッフを採用したのが最初です。

今では中国、フィリピン、韓国、スペイン、ポルトガルなど。10か国の言語に対応しています。

始めはどのように採用活動されていたのですか?

最初は英語ができる社員を探していたので、英字新聞に求人を掲載しました。最近は、採用したい国籍に合わせた人材会社に依頼しています。

面接の前にフィルタリングが出来ているので、メディアに掲載するより楽ですね。

弊社からはベトナム人のリンさんをご採用いただきました

外資系企業からの依頼が多く欧米の割合が高いのですが、アジア人も積極的に採用しています。時代の流れとして、高度人材以外のアジア人も増えるでしょう。

アジア出身の社員の方からは、はっきりとした意欲を感じます。

若い勤勉な、夢を持った人が一人いると周りの環境が変わりますね。

リンさんのお仕事ぶりはいかがですか?

評判が良いですよ。毎日積極的に学習して、毎日進歩している。まだ入社して二か月あまりなので、比較的やさしい案件のアシスタントとして働いてもらっています。

ベトナムのマーケットは拡大しているので、社員が一人いると心強いですね。外国人でも行政書士になれますので、日々知識をつけて成長して欲しいです。

外国人の採用面接は判断基準に迷うという声をよくいただきます。外国人社員の面接で気を付けていることはありますか?

日本は採用してから適性をみてポジションを決める企業が多いですよね。採用後に任せたい仕事が明確であるほど、悩みは少ないと思います。

 

採用面接は外国人社員も面接官をしています。日英翻訳のペーパーテストも取り入れており、どんな文字を書くのか、オーガナイズされているかをチェックしています。

たしかに、文字には性格が現れますね。多国籍社員の採用に成功されていらっしゃいますが、とはいえ、一緒に働くなかで困った経験はございますか?

コミュニケーションのギャップは多少あります。日本人同士だと当然のリアクションが返ってこないことも。

例えば、業務を指示したとき、日本人は一旦やってみてから質問する。対して、外国人は指示した段階で質問することが多い。慣れない日本人社員はストレスが溜まることもあるようです。

 

どこの国でも色んな人がいるのは当然のことなので、日本人側が理解することが必要だと思います。

感情は動かさず、冷静に。

「こういう反応をしているのはどうしてかな、面白いな」という思考になってもらいたい。なかなか、そうはいかないこともありますが(笑)

なるほど。感情と切り離すのがポイントのようですね。

日本在住が長いと、だんだん日本人的になる外国人も多いですが、意見が言えないとフラストレーションが溜まっているはず。文化の違いを例えるならば、西部劇はとりあえず決闘するけれど、日本のアニメは耐えた末に最後で戦う。日本のマンガの面白い点として聞いたことがあります。

 

「日本のことを理解してほしい」「日本の大事なものを残したい」というだけでは上手くいかない時代に入ってしまっていると思います。日本人側が変えていかなければいけないですね。コミュニケーションの違いはありますが、外国人社員は問題が起こる前に訴えてくれることが多いので、発見につながります。

外国人社員を採用されて良かった点もたくさんあるのではないでしょうか。

在籍する外国人からその国の文化や日本のコミュニティについての最新情報が得られるだけではなく、直接各スタッフの人脈ネットワークに属する外国人社会から入管手続のご依頼をいただくこともあります。マーケティング、その他の業務において大変助かっています。

 

外国人社員と働き、多様な価値観を認める経験が、外国人顧客とのコミュニケーション向上につながります。さらに言えば、これからますます多文化になっていく日本社会に適応する助けとなることを期待しています。人生を自分の努力と責任で切り拓いていこうとする努力、行動力は外国人スタッフのほうが強く見られます。私自身、毎日一緒に働くことを楽しんでいますよ。

 

想像してみてほしいのですが、例えば、日本人であるあなたがアメリカに留学をして、「もう少し長くアメリカにいたいな」と思ったとします。現地のイミグレーションロイヤルに行って、たどたどしい日本語で対応してくれたら、それはそれで嬉しい。

でも、そこに日本人のスタッフがいたとしたら、もっと安心しませんか。

そんな風に、ベトナムの人にはベトナム人、フィリピンの人にはフィリピン人が対応できるようにしたい。外国人の受け入れがさらに進む日本の縮図のようですね。日本で生活を始めるまえに、先にここで色々な経験をしてもらいたいです。